盆踊りとは

盆踊りの歴史

盆踊り
盆踊り大会

盆踊りの元祖は古代神事に遡り、神に祷りを捧げる巫女舞や白拍子が起源です。江戸時代に流行した歌舞伎や日本舞踊などの商用芸とは異なり、800年以上もの長い歴史に支えられた、日本の舞踊芸能の中で最も格の高い伝統奉納舞踊です。

このような高尚な奉納舞踊が一般民衆にも下向し、盂蘭盆に、霊魂を迎え、死者を供養するための行事として、主に新仏教が栄えた鎌倉時代に一気に広まりました。その後、自らの極楽往生を願って陽気に明るく踊るようになります。

ところで、歌舞伎の語源である「かぶく」とは、「常識外れの」「異様な風体の」と言う意味であり、出雲阿国が男装をして念仏踊をしたところから始まりました(阿国歌舞伎)。そうです! 歌舞伎の起源も盆踊りなのです。男装をして踊る姿は当時としては奇妙であり、「異様な踊り=歌舞伎踊り」と言う名称で呼ばれました。歌舞伎踊りは若い遊女が踊り、寛永期に流行します。しかし、遊女歌舞伎は売春を目的として公演されたため、風俗が乱れると幕府により禁止されました。次に美男子の歌舞伎(若衆歌舞伎)が流行しましたが、こちらも売春が蔓延したため禁止となります。女性は禁止、若い男子も禁止となったため、現在の中年男性が演じる型(野郎歌舞伎)が定着、と言う変遷を歌舞伎は辿りました。

話を盆踊りに戻します。様々な芸能の起源となった盆踊りですが、現代では、多くの人が踊りを愉しむ、夏の代表的な娯楽としての要素も伴い、最近では若い人を中心に再び人気が高まっています。

 

日本人につなぐ和の心

盆踊り
令和を彩る日本の心

盆踊りで使用される楽曲は、永く日本人に愛され続けてきた和の旋律で構成されています。また、一つ一つの所作に関しても美しい日本人の姿を表したものばかりです。

リズム、節回し、メロディ、所作、、、全ての中に、和の伝統が生きています。皆で踊る3分間のドラマの中には、日本人としての悦びや哀しみ、喜怒哀楽が凝縮されているのです。盆踊りに参加することで、心の奥底に隠れていた、日本人としての「本来の自分」に出逢えるかもしれませんね。

 

循環をあらわす盆踊り

盆踊り
循環する盆踊り

櫓を中心に円になって、同じ場所をグルグル廻ります。また、振り付けも一連の所作の繰り返しで、グルグル廻ります。つまりA→B→C→D→A→B→C→D→A→B→、、、複素平面での回転を彷彿とさせる美しさがありますよね。

ところで盆踊りは、神事に加え仏教の流れも汲んでいます。仏教の教えは、転生輪廻、因果応報、と、基本的にはグルグル循環いたします。思えば、地球の軌道は循環し、一年の四季も循環し、一週間は循環し、一日は循環します。知らず知らずのうちに、人は皆、「循環」の中を生きているのかもしれません。

 

踊りを取り巻く基本構造

盆踊り
踊りを取り巻く基本構造

一つ一つの楽曲には意味があり、作家や郷土の魂が込められています。例えば踊りの振りには一つ一つに意味があります。奇想天外盆踊りでJ-popの曲に民謡の振付をそのまま当てて踊ったりしているところもあるようですが、センスが悪いと言う以前に著作権や創作と盗作の区別の点で、ダンスなど他ジャンルの芸能から酷く軽蔑されています。

できれば、振りのマニュアルをただ覚えるだけではなく、歌詞、メロディ、心情、背景、由来、歴史など、日本文化としての人文科学の観点から、きちんと解釈をしてみましょう。

踊りとは、歴史や文化によって形成された、人間の心情の発露であるため、踊りと言う表層部を支える、目に見えない深層部に焦点をあてると、面白さが倍増します☆そして盆踊りは大衆文化として発展してきたため、積年の人類の営みが凝縮されています。日本人とは何か、人間とは如何なる存在か、そして自分は如何にして生きるべきか、など様々なヒントが隠されています。

これを頭で考えるのではなく、踊りを愉しむ中で自然と感じていきましょう!盆踊りを追究することで、周りの風景が、あなたの未来が、ガラッと変わります

 

盆踊りの発展と衰退

盆踊り
盆踊りを牽引した大スターたち

盆踊り(民族舞踊)を民謡踊りと混同している人が多いですが、盆踊りは直接民謡から生まれたものではありません。盆踊りは、レコードの普及、歌謡曲や演歌の流行とともに日本全国に凄まじい勢いで発展しました。これらの文化は総じて民踊(みんよう)と表されます。そして、各郷土に根差した盆踊りとして、地元に伝わる民謡に注目し、それを盆踊りに合った歌謡曲風に直して普及させました。これらは時に新民謡などと民謡と区別されることがありますが、古くからの民謡を題材にした曲も、盆踊りとして普及したのは歌謡曲調に改めたものです。

しかし、盆踊りや演歌の発展があまりに急速で甚大だったこともあり、残念ながら流行の中心は意図的にJ-POPなどに置き換えられていき、演歌や盆踊り文化は急速に衰退していきました。但し、形は違えどその失われた気品や煌びやかな文化は、同じく近代から花開き大成功を収めた舞台藝能などの中に永く生き続けています。また、これらの影響を受けて民謡を舞台で踊る民舞と言うジャンルも後に出現しました。

 

盆踊りにおける「ハレとケ」

盆踊り
盆踊りにおける「ハレとケ」

日本には昔からハレとケを分ける文化があります。ハレは非日常を表し、改まった型式のことを指します。 一方、ケは日常を表し、普段通りの型式を指します。

多くのお祭りや催しは、その日のために準備をして、衣裳も改めて臨む「ハレの芸能」です。 一方、盆踊りは、あくまでも日常の延長、日々の生活の営みから派生したものであり「ケの芸能」です。その意味では、普段着で盆踊りに参加したり、仕事帰りに立ち寄るのも、寧ろ正統な楽しみ方と言えるかもしれません。

中には盆踊りに泥臭さを感じる方がいるかもしれませんが、それは毎日の日常生活を背負った「生きる泥臭さ」です。また、 思いっきり羽目を外し過ぎている人やふざけて踊っている人に厳しい眼を向けるのも、そこが「日常の場」であるからなのでしょう。大型の盆踊り大会の多くが平日を跨いで(金土など)開催されているのも、「日常の延長」と言う意味合いがあるからなのです。

 

盆踊りの効果

盆踊り
盆踊りで運気上昇!

さて、盆踊りを踊ると、どのような効能があるのでしょうか。日々のストレス発散・リフレッシュ効果、適度な運動、美しい姿勢や所作の習得は言うまでもありませんが、古くは神仏に捧げ、霊魂を迎えるところに端を発していることから、盆踊りは「幸運を招く」とも言われています。

盆踊りに招かれる霊魂は、幸運をもたらす善霊であり、逆に、暗くて陰気な悪霊は太鼓や鳴り物の音に逃げ出してしまいます(盆踊り曲の中には濁声の歌もありますが、これには毒を以て毒を制す「悪魔祓い」の側面があります)。「鬼は外、福は内」は節分の時の決まり文句ですが、同様の効能が盆踊りにもあるんですね。皆さんも、盆踊りを踊って、運気を上昇させましょう!

 

<小説>7つの盆物語

<飛鳥>「縁の沓」

 

<平安>「大極殿の月」

 

<戦国>「大坂夏の盆」

 

<江戸>「共に梅を愛でたく候」

 

<明治>「霧の鹿鳴館」

 

<昭和>「哀しい柱時計」

 

<令和>「願いを叶える盆踊り」